野田屋 天ぷら講習会
「天ぷら」の調理上に措ける注意点
 一般的に「天ぷら」専門店は油にこだわり、高級且つ上質な胡麻油を確保して使用しておりますが、利潤を追求する店舗等ではサラダ油(大豆・菜種・とうもろこし等を混ぜた原料で生成した油)に胡麻油を少量混ぜて使用する事もあります。
 新しい油が最上であるので、調理に因り汚れてきたら、丹念に目の細かい網で漉し取りつつ綺麗な油を追い足して使用します。
油の温度の適温は食材に因り異なりますが、約160℃-180℃程ですので下記に食材別に列挙致します。

160℃-165℃
この温度帯を使用するのは、三つ葉・獅子唐・菊菜等で、裏や一部に衣をつけて、比較的にじっくり揚げると、衣のついてない部分から水分が蒸発して、色鮮やか且つ食感良く揚がります。
165℃-170℃
この温度帯を使用するのは、芋・南京・生椎茸・茄子・蓮根等で、茄子は皮目を  色鮮やかに揚げる為に、また生椎茸は皮目から水分を飛ばして食感良く揚げる為  に、何れも裏側だけに衣を付けます。
175℃-180℃
この温度帯を使用するのは、海老・烏賊・鱚・穴子等の魚介類一般で、中でも穴子は、じっくり揚げながら水分及び臭気を蒸発させる事が必要であります。
「天ぷら」の衣を生成するには卵・小麦粉・水が必要であります。
「天ぷら」専門店では、衣の原料にも独自のこだわりがありますが、一般的には新鮮な卵と良質の水(水道水ではカルキ臭の為不適)と薄力粉(強力粉や普通粉ではグルテン含有量が多いので粘り過ぎて不適)を使用して以下のように作成します。
   
@卵黄1に対して水8の割合で注いだ後に、泡立て器でよく溶いた玉水を冷蔵庫で冷やしておきます。(10℃-15℃が適温)
A薄力粉を篩いにかけた後、玉水1に対して薄力粉を1.3の割合で余りかき廻さないように混ぜて、適度な固さの衣を作ります。
(グルテンの粘りが出過ぎないように注意する)
衣は時間が経過すると粘りが出て、また2時間以上経つと腰がなくなり衣としては使用不適になるので必ず揚げる直前に作るように心掛けます。

そして、衣を食材に上手く付着させる為には、事前に食材に薄力粉を付ける「下粉を付ける」「打ち粉をする」作業が必要であり、色や香りを大切にする食材は薄い衣で短時間に揚げ、また(味覚が独特な食材等は厚い衣でじっくり揚げるようにします)
揚げる
「天ぷら」に適した鍋は、油の温度を一定に保ち易い厚手の鉄鍋か銅鍋であり、以下のようにして油の温度を見極める事が必要であります。
○150℃→衣を油の中に落とすと、底まで沈んで浮くのに時間がかかる。
○160℃→衣を油の中に落とすと、底まで沈んでゆっくり浮いてくる。
○170℃→衣を油の中に落とすと、底まで沈んで直ぐ浮いてくる。
○180℃→衣を油の中に落とすと、途中で直ぐに浮いてくる。

揚げ時間及び油温は食材に因り異なりますが、一般的には鍋に入れる食材の量に注意しつつ、油を適温に保ちながら揚げ過ぎに注意する事ですが、箸で触った感触や泡の状態で判断するので、熟練を必要とし難易度も高いので以下に詳細な注意点を列挙します。

@油の深さは、使用する食材の4-5倍の厚みが必要です。

A鍋に入れる食材は、油の面積の約半分を適量として、揚げている途中は衣が固まるまでは箸等で触らないように注意します。

B衣が固まってきた時を見計らって、油温を適度に調節しながら、箸等で食材を返しつつ両面から熱を通すように心掛けます。

C揚げ滓(天滓)は、放置すると油の腰が無くなると共に揚げ物に細かい滓が付着するので、目の細かい網杓子等で頻繁に取り除く旨を心掛けます。

D揚げ始めてから、油の音と泡が無くなり食材が表面に浮き、且つ触感が固く軽く感じる頃合が揚げ頃ですので、繊細な注意が必要です。
E揚げた食材は余分な油を除く為にも、ペーパータオル等を敷いた容器に立てて並べ、盛り付ける時も和紙等を敷く旨心掛けます。
揚げ終わったら、油が暖かい間に、鍋底の滓の沈殿した油以外を、網目の細かい油漉し等で漉した後に、専用の容器に入れて冷暗所で保存します。

後に再度使用する時は、新しい油を4-5割程足して使用しますが、3度目以降は「天ぷら」には適しませんので他の調理に使用します。

また、使用済みの油を長期間保存すると酸化するので「天ぷら」には不適ですので注意が必要です。
天露(香り塩)
代表的な天露(香り塩)には、以下のような種類があります。

○濃口醤油が1・味醂が1・出汁が5の割下天露に、生姜卸と大根卸で食する。
○淡口醤油が1・味醂が1・出汁が10の割下天露に、紅葉卸と万能葱で食する。
○檸檬と塩で食する。
○ゆかり塩(ゆかりと精製塩)で食する。
○昆布塩(昆布の粉と精製塩)で食する。